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甍賞
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●歴代審査員の紹介

1995年 第8回 瓦屋根設計コンクール

審査員講評



阪田 誠造
さかた せいぞう
日本建築学会
坂倉建築研究所代表
  今年度の「甍賞」の応募は前回よりも多く、この賞の意義と役割が業界から建築界に、さらに社会に浸透している手応えを感じながら、審査は明るい雰囲気のうちに行われました。私としては今回が初めての審査でしたので、審査前には大震災の瓦の受難を思い、瓦の形状や工法など、新しい工夫が応募の中に見出せればと期待していました。しかし審査会場の数多い作品を拝見して、これまでの賞の関心と傾向は、瓦を使ったデザインに殆ど絞られていることを感じました。一応図面も提出添付されていますが、デザイン主体が鮮明であり、写真も瓦に焦点を絞った構成が多く、瓦の技術的工夫があったとしても、この応募資料から見出すことは難しいと思いました。応募の中には、知名な建築家の作品も少なからず寄せられていました。既知のそうした作品に票が集まるのかと予測をしていましたが、意外にも、審査員の票の流れは、地方の建築家や未知の建築家を顕彰したいという方向に、期せずして向かったように思われます。建築と瓦の現代的なデザインを評価する上で、伝統や地方色が関わりながら、しかしただそれを守るというのみでなく、現代の生活空間環境と建築づくりに、瓦が生きて使われていると感じるものを拾い上げた結果が、たまたま地方に密着した作品が多く浮上することになったように考えられます。建築材料がおしなべて全国画一的に工業生産品として均質化する中にあって、瓦は、地方色を色濃く伝えている部分もあり、地域圏で生産と愛着が今も結ばれているところに、他の材料と異なる魅力を感じます。今年の受賞作品は、瓦のそのような役割に光を当てた結果になっているように思います。
以上
付記
  個々の評を述べる余裕はありませんが、印象に残ったものに触れさせていただきます。
  「尚玄山荘」・静かに瓦に語らせている建築です。周辺の緑を背景に、水の庭を囲い込む空間構成も、簡潔で飾らない外観に共通した爽やかさが感じられ、写真が非常に美しかったことが印象的でした。
  「町営住宅日野辺団地」・住宅作品が、美しいが現代的視点がやや不明というものが多く、審査員間で議論と見直しが繰替えされ、その結果当初「景観賞」の候補と目されていた本作品が、住宅部門の最優秀作品に選定されました。山間の町の風土的色合いを大切に考え、瓦にその中心的役割を求めています。全国一律に色や艶が同じでない、瓦を群景観において、地方の独自性に生かしたところが評価されました。
  「西舞鶴駅前緑地」・駅前ひろばの床、モニュメントである歴史的な太鼓楼の意匠の仕上げに一貫して同じ瓦を使用し、城下町のたたずまいの表出に成功したと思われます。この作品などは、写真だけで判断するのは難しく、実物を見れば或いはもっと高い評価を得ることが出来たのかも知れません。


河野 進
こうの すすむ
日本建築士会連合会
河野進設計事務所
  阪神淡路大震災に於いて、本瓦葺の家屋の倒壊や瓦の落下事例が多く伝えられ、その意味ではいささか逆風の中での甍賞審査となった。老朽化や不充分な施工によるものが多かったとはいえ、屋根荷重の軽減や、落下防止の施工法の開発など、技術的に改良の余地のある事も指摘された。日本の伝統的景観を形成して来た主要な要素の一つであり、耐候性、経済性、表現力、施工性などに多くの優れた特性を持つ瓦だけに、今回の地震は、より一層の性能向上と、新しい表現の可能性を開発する良い機会にするべきものと思う。
  住宅部門金賞を得た町営住宅日野辺団地は、前回金賞の弘道小学校と同じ兵庫県出石町に建つ集合住宅である。
  但馬地方特有のゆったりした山並に抱かれた出石の町に新たに加わった町営住宅は、昔からそこにあった山の辺の集落の様なたたずまいを見せており、従来の街の風景に継ながる落ち着いた広がりと、新しい景観を付け加えている。
  一般建築部門金賞の尚玄山荘は、切妻の三棟の建物が池を囲んでコの字形に配置され、大屋根のいぶし瓦の硬質な光と、白い壁による単純な構成が、モダンで端正な表現となっており、瓦の持つ重厚なイメージからは抜け出た建築となっている。
  銀賞の信州高遠美術館は、ゆるやかな弧を描くコンクリート打放しの壁の上に金属屋根を葺き、更に1段高くくっきりと影を刻むいぶし瓦の屋根を浮かせている。前面のなだらかな芝生の起伏に対応して、心地良いリズムに分節された屋根は軽やかである。全体の印象はストイックであり、春には満開の彼岸桜を一きわ美しく際立たせるものと思う。
  西舞鶴駅前緑地は広場の床とランドマークとしての塔の壁や屋根にいぶし瓦を使い、部分的にガラスブロックと組み合わせて照明を仕込むなど、瓦の新しい使い方と表現を計りみており、景観賞となった。


渡辺 明
わたなべ あきら
新日本建築家協会
渡辺明設計事務所
  100年の記念として、時あたかも開催中のベネチア・ビエンナーレ展、この企画は、現代アートのオリンピックと知られる国際展であり、次世紀への指標を模索しつつ、アートがどんな方向性に向かうのか、世界中から視線が繰られ、その評価は多様性の美に於ける方向性が諒受された。今回の甍賞の応募作品の審査においても、同様な方向性が瓦をテーマに創られた事を再確認する機会と多様な感動や情動が交差する創造的な新時代への位相が見受けられ、大きく未来に夢を感じとることが出来る。
  私の瓦に対する想いと心象風景は、大海原に光る波に似た風景ともいえます。その姿は潮の流れに乗って小さな小さな波形に光が射し込む時、波形は海に舞い、空も海も一体となって遠く水平線の彼方に消え、響きのみが探感となって包み込む。瓦にはこの自然感が新鮮な空気となって、魅力ある空間として印象に残る一つである。日本独自の和型に残る形は江戸中期に考案され、素朴な生活感情が今日までその姿として美しさを留めながら、人の心を高ぶらせる。


森田 重人
もりた しげと
日本建築士事務所協会連合会
戸田建設常務
  美しい建築とはぜいたくなもので、屋根だけ見ていても、壁だけ見ていても、一向に見つからない。どうしても地面から生えているわけで、根から繋がっている。天辺の屋根だけ栄養がゆきわたるのは無理で、幹や枝の節々にもそれ相応に養分がいる。瓦屋根・瓦屋 根とお題目を唱えてみたものの、そうはゆかないのがこの甍賞の本 質だろうと思う。
  古来、日本の建築美は屋根にあるといわれてきた。現代建築が屋根を失ったとき、確かに日本が見えなくなった。僅かに壁にすがる手立てしか残っていなかった。そんなこんなで皆の見る眼はインターナショナルに向っていった。時たま誰かが瓦を使ったりすると、そのアナクロニズムを冷やかされたりしたものだ。それが更に進んで、皆の見る眼がグローバルになってくると、又瓦が出てきた。世界のあちこちで瓦の美の再発見があり、その機能性・文化性が見直された。
  今、瓦を使うことに抵抗感をもつ人は少ない。さまざまな用途に、さまざまな形態に瓦は使用され、技術が技術を生んで、多様な世界を創出している。
  今回の審査で、150点にも及ぶ応募パネルを前にして、右往左往するのはこちらの番である。何よりも先づ自分の審査の眼を定めないことには、この迷路に踏み込めない。そんな事情で整理してみたものが、以上述べてきた自分の見る眼のつもりである。
  さて、会場を3巡ほどすると、大体、意中の物が見えてきた。その後、討論あり投票ありで行くべき所に行きつくから不思議なものだ。結果は上位6賞については全く異論はない。佳作については若干の見解の相違はないわけではないが、当然といえば当然である。尚、金賞については更に現地に赴いて確認作業も行なった。私も日野辺団地まで足をのばしたが、パネルから伝わってくる以上のものを教えられて、帰路は大満足であった。


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