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●歴代審査員の紹介

2003年 第12回 瓦屋根設計コンクール

審査員講評


仙田 満
せんだ みつる
日本建築学会
環境デザイン研究所名誉所長
  町並の美しさは、日本でも西欧でもその多くは屋根に負っている。瓦屋根の美しさが統一的に調和している町並はどこの町や村の景観であっても感動を与える。今、日本の都市景観、特に歴史的な都市景観の再生が言われているが、そのポイントは屋根にあると言っても良い。特に日本の町屋は建物と建物の個体距離が0の世界であることが多い。その場合には屋根の様式とその素材は極めて大きく影響する。私たちは日本の都市の町並をもう一度、距離とデザインと緑との関係において考え直す必要がある。
  本年度の金賞(国土交通大臣賞)は「花扇2002」と呼ぷ住宅である。この住宅は二等辺三角形という敷地をうまく利用し、正面性のある端正な作品である。しかも新しい瓦屋根は十分な空気層を持ち、熱環境の改善を提案している建築も屋根瓦もとても魅力的な作品である。同じく金賞(経済産業大臣賞)は「海椿葉山」と呼ぷ温泉旅館である。瓦の風合いと色の変化を楽しむ職人の技をも引き出した深みのある屋根の仕上がりである。作者の力量が感じられる。銀賞の「芦屋カントリー倶楽部別館」は陰影のコントラストの強い美しい作品である。銅賞の「新潟ワイン醸造村」は和風の屋根とワイナリーとしての取り合わせのおもしろさを評価したい。特別賞の「バス停前のパティオ」は「道路と中庭をもつ建物の境界としての壁に時間と自然を感じさせるテクスチャーとして瓦を選んだ」と作者は述べているが、その意図を見事に成功させている。
  景観賞の「津和野町立安野光雅美術館」は比較的大きな建物を分節化して、周囲の町並と同化させようとしており、町並景観に優れて寄与していると評価できる。造形賞「瓦の庭−かい(海)−」は瓦を素材とした造景空間として強い造形性を感じる作品である。瓦による街角の美的空間の出現は、市民のみならず新しい瓦の可能性を感じさせるに違いない。佳倖賞10点はそれぞれ瓦屋根、瓦という素材を用いた作品として優れている。選にはもれたが、この他にも私個人としては入選されてもしかるぺき作品は数点あった。応募者の努力に敬意を表したい。


出江 寛
いずえ かん
日本建築家協会
出江建築事務所代表
  5月23日、甍賞審査日に、運悪く日本建築家協会の総会日と重なり、私のみ前日の22日に1人審査となった。
  我国の美しい風景、そして絵になる風景は、古い瓦の街並である。東山魁夷や福田平八等の日本画家が瓦の風景を描いている。
  昔の建築は、木、土、石、瓦の自然の恵みによる材料で出来ていた。それは、優しく、情緒的で、美しいものであった。しかし、現代建築は、コンクリート、金属、硝子、そして、消防法や建築基準法等により、昔のような自然の材料で建築を造れなくなった。このままでは、かつての日本の美しい瓦屋根の景色はなくなってしまうであろう。淋しいことである。そこで、このコンペで重要な思想は、『瓦と現代の建築材料をどう美しく融合させるか』ということであり、瓦が将来我国に定着し、発展するかどうかは、この思想にかかっている。私の審査の視点はここにある。
花扁2002
  瓦屋根の建築がこんなにモダンで明るい表情を見せた建築を最近見たことがない。うまいの一言である。瓦の乗った建築が、いつも美しいと思うのは、谷崎潤一郎の云う陰翳礼賛的な美しさを感じさせる建築であるが、この建築には、そんな暗くじめじめしたものは感じられず、と云ってドライでもない。今の若い人達にも好かれそうな日本建築である。瓦の葺き方も、金属との併用によって、今まで見たことのない甍の波で、フレッシュで好感が持てた。
海椿葉山
  土着的アノニマスな建築のうまい人であり、この建築もそうである。だから安心して見ていられる。応募件品中の彩色瓦の中では、やはりこれが圧倒的に魅力的であった。南紀の黒潮を背景に褐色の瓦を選んだのはうまい。ただ、楕円形屋根の軒先部分のディテールのわかる写真が欲しかった。この部分が全て役物で処理されているとすれば、無数に出て来る役物瓦は造る方も費用も大変である。これはもう一考するぺきではないか。
芦屋カンツリー倶楽部別館
  瓦屋根は松林を背景とするとよく似合う。国立公園内であることを配慮して瓦屋根とし、そして、ヴォリュームを抑える為、屋根を分節化したのはうまいが、瓦屋根の部分に今一つ工夫がなかったのが、表現として新鮮味や力強さを感じられなかった。が、瓦と硝子との対比が現代的で心に残った。
新潟ワイン醸造村
  この建築も銀賞の芦屋カンツリー倶楽部と同じ、松林を背景としており、瓦屋根が景観のアクセントとなっている。ただ、瓦屋根に新しい工夫がなく、やや退屈である。


難波 和彦
なんば かずひこ
日本建築士会連合会
大阪市立大学教授
  今回、初めて甍賞の審査をして驚くことばかりだった。正直にいうと、これまで僕は自分が設計する建築で瓦を使ったことがないし、多分これからも使うことはないだろうと考えていた。瓦は完成した建築材料であり、創造的な使い方は難しいのではないかと考えていたからである。したがって審査委員の依頼が来たとき、何かの間違いではないかと思った。しかし、これは瓦について勉強する絶好の機会だと考え直し、引き受けることにした。
  金賞(国土交通大臣賞)の「花扇2002」は小さな建築だが、瓦を屋根のダブルスキンとして使った斬新な試みである。金属屋根によって防水し、その上にU型の瓦屋根を載せた二重屋根であり、伝統的な土蔵の「離れ屋根」の原理を現代的に解釈した構法である。コスト的にはまだ難しい問題はあるかも知れないが、このように新しい構法を試みることによって、瓦屋根の熱的性能を向上させることは、瓦の未来にとってきわめて貴重な提案である。僕にとってこの建築は、今回の審査に参加した最大の成果だった。
  金賞(経済産業大臣賞)の「海椿葉山」は、海のすぐ傍に建つ小旅館であり、瓦屋根のテクスチャーと構法を知り尽くしたデザインである。楕円形平面のサロン棟にはラフな仕上げの平瓦を、宿泊棟の切妻屋根は潮を被って艶消になった瓦で葺かれている。伝統的な瓦屋根が近代的なデザインと調和することを確証した秀作だと思う。
  今回の応募件品の中では、以上の2作品が突出していた。その他の作品で印象に残ったのは、銀賞の「芦屋カンツリー倶楽部別館」と佳作の「Ta House」である。この2作品は、近代建築のデザイン・ボキャブラリーの中に伝統的な瓦屋根を取り込もうとしている点で共通している。こうした試みを続けることが瓦屋根を普及させる不可欠な条件だろう。
  銅賞の「新潟ワイン醸造村」と景観賞(屋根新聞社賞)の「島根県津和野町安野光雅美術館」は瓦屋根の集合が、緑に溢れた自然と伝統的な街並に調和することを証明した作品である。


小林 志朗
こばやし しろう
日本建築士事務所協会連合会
小林設計一級建築士事務所
  数多くの応募作品は期待通りの秀作ばかり、またそれぞれに特徴を持ったもので、瓦が日本の風土のなかに、さらに新しい息吹を与えている好印象を持たせていただきました。
  金賞の花扇は花店を持つ住宅である。平瓦だけをわずかな隙間をもって葺き、熱的効果をねらいながら、建築としてはやわらかい感じを与えている。ディテールの工夫とともに頂部のガラスの箱に見せる花木だけで看板とするなど意欲的な作品となっている。
  海椿葉山は小さな温泉宿で、伝統素材を新しい意匠で着こなした素晴らしい作品である。宿泊棟とサロン棟に異なる彩陶瓦を使い、やや高いところのサロン棟から低い宿泊棟の屋根を意識させ、海空を背景とする効果は設計者の意図通りといえる。
  銀賞の芦屋カンツリー倶楽部別館は、六甲の山並を背景にゆるい勾配で一文字瓦を使った切妻屋根を雁行させて、細い柱とともに瀟酒に仕上た秀逸な建築である。
  銅賞の新潟ワイン醸造村は、白壁と板壁に勾配の異なるS型瓦と、金属の平葺きでやわらかいワイナリーの雰囲気を出したものと思う。
  特別賞のバス停前のパティオは、外壁をボーダー状の瓦で仕上げて、道行く人にやすらぎを与えるねらいである。
  景観賞の安野光雅美術館は、津和野の家並を生かした石見瓦を載せた折り重なる切妻屋根と白漆喰壁の演出が見事である。
  造形賞は文字通り瓦を使いこなした庭である。芝生との調和がよく瓦を使いすぎないことが効いている。
  今後も瓦を屋根はもとより、環境・造形にいかした高レベルの作品を待ちたい。


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