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●歴代審査員の紹介

1991年 第6回 瓦屋根設計コンクール

審査員講評


池田 武邦
いけだ たけくに
日本建築学会
日本設計社長
  建築は経済的、技術的産物であると同時に極めて文化的所産でもあります。ここでいう文化とは、その土地の風土に根ざし地域固有の歴史、風俗、習慣に関わるもので、それはその地域に住む人々の先祖から子孫に伝承されるものを言います。
  その意味で、瓦はまさに建築文化を支える主要な建材の一つであるといえます。
  しかし、1400年の歴史と伝統をもち日本の建築文化を文字通り支えてきたこの瓦も、近代化の激流に押し流されている多くの人々は今日、その存在意義を忘れ勝ちであります。
  そのような中で、瓦本来のもつ文化的意義を現代社会に再評価する社会的活動ともいえる甍賞コンクールも今年は6回目となりました。163点に及ぶ応募作品は總じて大変質の高いものであり、コンクールそのものが社会的に定着し、瓦文化に対する認識がようやく再び世の中に芽生え始めていることを審査に当たって実感致しました。
  建設大臣賞の小山邸は古墳群のある敷地に建つ住宅で将来は町の文化財として古墳と共に屋内外展示場として広く町民に開放されるとのことです。太古の生活等に想いが届くことを夢みて形づくったという此の瓦屋根の形態は在来の屋根形の固定観念を破り、極めて独創性に富んでいます。金賞に値する作品といえます。
  通産大臣賞の奈良県新公会堂は奈良という古都にふさわしい日本の伝統的文化遺産である正倉院文様や鳳風のデザインを用い乍ら、新しい時代の新鮮な息吹きが感じとれる見事な作品といえます。
  銀賞の奥郷屋敷は日本の山や田園風景に囲まれる自然あふれる環境に、伝統的本瓦はやはり最もふさわしい素材であるということを改めて認識させられる作品といえます。
  銅賞のコモンビレッジ移瀬は窯変瓦が周辺の環境に絵画的な調和をつくり、親しみ易さを感じさせ、新しい住居群の魅力を創出する役割を大きく果たしているといえる作品です。
  特別賞の鬼の回廊鬼屋根は大江山の鬼伝説の地に鬼瓦公園をつくり、その中枢に鬼の回廊鬼屋根を企画したという企画も秀逸乍ら、作品も正にそれにぴったりとふさわしい見事な出来です。
  景観賞の河村織物本社は京町家の景観の意義を良くわきまえ、伝統的建築文化を護りその再生に大きく貢献している作品といえます。
  京都はその文化的価値の故に太平洋戦争中敵国であった米軍すら爆撃を控え戦禍からまぬかれたのに拘らず、誠に残念乍ら戦後日本人自ら近代化の流れに流されて大切な文化遺産である町家の景観をこわしています。そのような時代の風潮の中で本作品の意義は大いに評価されるべきであると考えます。


宮本 忠長
みやもと ただなが
日本建築士会連合会
宮本忠長建築設計事務所
  今回の応募作品は、住宅部門、一般部門、それぞれ、質に於いても、レベルの高い作品が多く、甍賞が、ひろく認知されている証拠であると思いました。
  作品総数163点は、単に、瓦を使用した造形という以上に、総合としての完成度の高い作品が多く、当然、「瓦」を使い、「瓦」の特性を最大限に活かしての「賞」として、今日、日本建築デザイン界のなかで、しっかり定着しつつあると思いました。
  その理由の一つに、「瓦」の持つ特性が、設計デザインする建築家にとって、自由性に富み、建築家の意のままに使える(表現)可能性を秘めているからです。
  近時、工業製品が多く市場に出廻り、カタログを切り取って集めるような建築が当然のように目立つなかで、建築家が「瓦」の素材の持つ固有の美しさ、有用性に注目する必然も、また、時代の流れでしょうか。
  『金賞』の奈良県新公会堂(戸尾任宏・設計)は、日本瓦の美しい葺き足が、端正なリズムを生み、堂宇の静寂な空間と対比して、日本の伝統的空間構成のなかで、近代的な感性と、清澄な空間を創出されて、建築としての高い完成度が評価されたと思います。
  一方、「小山郎」(矢野忍・設計)は異彩の放つ、一見して、「瓦」の妙味が特筆される。施主は、遠く、海を渡り、日本に新天地を求める。その当時の伝説を、作品の文脈に捉え、波を、大屋根の瓦葺きの曲面で表現し、「瓦」を使う施工の自由性を積極的に発揮された秀作である。
  『銀賞』の奥郷屋敷(狩野忠正・設計)は、日本瓦の優美さ、一枚一枚の瓦の持つ雅やかな施律を形象化し、見事な作品である。
  特に、丸栄陶業本社屋(内井昭蔵・設計)は、熟達な作者の完成度の高い、それでいて、無駄な主張の無い、打放しコンクリートの骨格と、日本瓦の素材、木質系の軸組等々を<確かな>視点で組合わせた秀作です。強く印象に残りました。
  また、那須友愛の森定住センター(長島孝一・設計)は作者の力量が結実されて建築空間に魅力を与えています。
  また、テーマとしての表現の見事さに鬼の回廊鬼屋根(山本久、佐藤克己・設計)の作品です。鬼瓦の彫刻です、鬼瓦の配り方、全体を巧みに修景して特別賞に値します。
  京のまち、河村織物本社(福島利光・設計)は、まち並修景の思想が徹底し、建築の持つ公共空間への配慮を見せて秀作です。
  今回、応募総数の約半分は専用住宅です、が、残り半数の80点近くの作品を用途別にみますと、ゴルフ場クラブハウス、小学校、博物館、美術館、料亭等々、多岐にわたって「瓦」を使用した建築であり、<瓦の未来性>への魅力を裏付けています。
  応募いただいた建築家の諸兄に、心から、敬意を表します。


石井 和絃
いしい かずひろ
新日本建築家協会
石井和紘建築研究所
  今年の金賞は全く対象的なものとなった。それぞれに今後の瓦の使い方の典型を表現している。一般建築の部の金賞は直線的で端正である。しかし少々きれいすぎるようでもある。住宅建築の部の金賞はエスニックでダイナミックである。しかし顔をしかめる混乱のままという批判もある。
  金賞の戸尾作品は、実は戸尾さんは川越のものも応募されていたのだが、奈良のものの方が屋根面がヒラ入りを出題に計画されていたので、瓦屋根がより活かされているように思えて、より優秀ということになった。川越のものはツマ入りで、壁の方が瓦より目立っているということになった。戸尾作品の美しさはこの甍賞の主流である。未来永劫日本の現代建築の極めた長所として生き続けていくだろう。しかし、それだけでよいのだろうかという気持ちにもなる。
  住宅の方の金賞の小山邸作品は家というものに別のシンメトリックな意味をかぶせている。こういう使い方は瓦に昔あったものだ。それを復活させている。しかし、エクソシストとしての建築家はよっぼど頑張らないと昔の怪獣が地底からゴジラやアンギラスのように現れて来る。近代建築はエクソシストなのだ。一方こちらはもっと戸尾作品に学んで、近代建築になっていないとまずい。
  イルカチームのものが銀賞ということになった有村さんたちのものは、屋根や壁や開口部がほとんど同列に扱われていて、その分屋根面積も小さくなっていたところが面白かった。普通、屋根が圧倒的な存在感を持ってしまうのが瓦の通例だが、この作品においてはそういう屋根への昔ふうの思い入れは姿を消していた。そこは金賞の二作品と違う。面白いが瓦の消費量は延びなく見えて損をしている。有村案はいわばパッチワークのような扱いで屋根が扱われている。今後のジェネレーションには瓦がドカンと屋根に乗ったような建物はうけない。こういうものを数こなして売上げを延ばすしかないのだ。
  有村さんの方は、ただ、金輪際つきつめたという感じに乏しく、これに金賞を出すとイルカ達にナメラレルような恐れもあって銀賞となった。
  瓦の応募の件数も増え、公共建築や学校で実に沢山の愉快な瓦の使用例が多いのに驚いた。特別賞となった鬼瓦を集めるといったテーマ性を持っているものはなお良い。
  景観賞についてはやはり伝統的建造物群の保存といった意味あいから、保存をリードするものが望まれる。今回のものは、その保守性がその鑑となってしかるべきものであった。こういう方法については、地元の教育委員会などで具体的に、こういう建築を梃子としてよく練ってその地の方法としてもらいたい。現在では文化庁が伝統的建造物群保存地区に対してしていることは極く限られた地区の保存だけである。むしろ、ここに景観賞として登場してくるものはそういう場所のみにあるだろう。現在の保存行政ではそういうところはどんどん破壊してよいのである。むしろ、A.B.C.D.Eというふうに地区を分類して、もっともきついところから、もっともゆるいところまで段階別に保存が考えられないととんでもない無力なものになってしまい、守りたくても守れないものになってしまっている。その意味で、この賞全体の中で景観賞の持っている意味は非常に大きい。


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