瓦Web‐人にやさしい三州瓦‐愛知県陶器瓦工業組合
甍賞
2008年 第14回 瓦屋根設計コンクール

審査員講評



古谷 誠章
ふるや のぶあき
早稲田大学理工学術院教授
ナスカ一級建築事務所代表
  今年初めて「甍賞」の審査に加わりましたが、審査会場に並べられた応募作に接して、改めて瓦に対する数多くの大変熱心な取り組みがなされていることを知りました。また、その取り組みは実に様々でありながら、そのすべてに共通するのが瓦のもつ「美しさ」に惹かれたものづくりの情熱であることが非常に印象的でした。
  なかでも住宅部門の金賞である国土交通大臣賞を受賞した大屋工務店の『北総の家』は、木造の個人宅でありながら、敷地内の分棟のすべてをいぶし瓦葺きにし、大変重厚な「の波」を作り上げています。瓦の製作や施工に当たった職人さんの心意気がひしひしと伝わる存在感があります。数多くの住宅部門の応募作の中でも際だって瓦への愛着を感じました。
  一方、一般部門の金賞である経済産業大臣賞を受賞した内藤廣建築設計事務所の『島根県芸術文化センター』は、島根県の石州瓦を縦横無尽に活用した大胆かつ緻密な意欲作で、これも審査の当初から他を引き離して圧倒的な魅力を放っていました。建築全体の単純で力強い造形と、瓦のもつ光とともに移ろう繊細で優美な表情の取りあわせが絶妙です。
  惜しくも銅賞にとどまりましたが、竹中工務店の『小倉百人仙首殿堂時雨殿』と日建設計の『総合地球環境学 研究所』はともに大型の建築物でありながら、屋根の造形を巧みに導いておおらかな瓦屋根を実現しています。前者が寄せ棟のモチーフを思いきって引き伸ばしてのびやかな形に、後者が大胆な円弧状の屋根型をつくりだして、それぞれが大屋根の圧迫感を減じ、あわせて瓦への空の反射を利用して重量感も軽減することに成功しています。いずれ劣らぬ力作だったと思います。


竹原 義二
たけはら よしじ
大阪市立大学院大学教授
無有建築工房代表
  屋根という存在に興味をそそられます。
  建築における家型は空との境界をつくり、自然の風景と同化しながら街並みをつくるといったカタチの表現の魅力をもっていると同時に、雨を凌ぎ、光や風を誘うことで内と外を関係づける重要な要素であると思います。中でも瓦は、その屋根勾配と葺き方も形状や色味の豊かさゆえに、表現する素材として万能であると思います。また、瓦は屋根以外にも床や壁に使われるなど、アイデアとディテール次第で使い方が広がるのも魅力です。
  瓦の味わいは不揃いな色の微妙な濃淡にあり、時が経つにつれ良さがでることにあります。しかし、今の瓦は均質であることが良しとされているため、瓦のテクスチュアが平坦で同質となり、本来の瓦の魅力と価値が落ちているように思われます。
  今回の審査では、古びていく良さが美しいと感じる建築作品を選びたいと思いました。結果として現代的に瓦を、屋根、壁、床に使用した公共建築と、伝統的な和瓦で表現した住宅建築が金賞に選ばれました。この公共建築は今までの瓦の表現とはひと味違った形で瓦が使われ、自然のなかに溶け込んでいることが評価されました。
  一方、住宅建築は、木造建築の伝統的な屋根の葺き方を十二分に発揮し、家型を余すことなく表現しているところが評価されました。瓦という素材を大胆に使用し、繊細な納まりを持ったデザインは環境を整え、街並みの中に悠然と建っています。
  瓦は新旧という時空を超えて、建築空間を生み出す素材であることを、今回の審査で改めて感じとりました。


木下 庸子
きのした ようこ
工学院大学教授
設計組織ADH代表
  土を原料とした自然の材料である瓦は、独特の素材感が魅力です。かつて屋根材として幅広くわが国に普及しましたが、その形状が西欧の近代建築の主流であったフラットルーフに馴染みにくかったせいか、わが国の近代建築の到来とともに、瓦=和風屋根というイメージが定着していったように思います。しかし、「環境にやさし い建築」が求められる時代となった今、瓦の新たな使われ方に可能性が見いだせるときが来たのではないでしょうか。
  金賞の経済産業大臣賞を獲得した「嶋根県技術文化センター」では、瓦を壁に応用するための形状や技術の開発がなされ、まさに瓦の今後を予言するような作品です。石州瓦の独特な色がこの建物のユニークな表情となり、この地域ならではの建築となっています。
  審査においては、その他に打ち放しコンクリートと取り合う外壁やランドスケープの舗装など、瓦=和風屋根という図式に対して新たな視点を示してくれた作品に、個人的には興味を持ちました。とはいえ、住宅部門金賞の国土交通大臣賞に輝いた「北総の家」における連続屋根の力強さや、「小倉百人一首殿堂時雨殿」のエレガントな屋根形状は、伝統的ないぶし瓦とともに創出し得る日本の景観美であり、瓦という素材とともに継承されるぺきわが国独自の文化であることも再認識させられました。また、既存のストックを活用し、改修によって再生を果たした事例にも、今後の瓦の展開を感じています。


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